緑の風が かぎ針編みの隙間を通り抜けるたびに、袖やスカートを気持ち良さそうに揺らしていたワンピース。
白とグリーンの爽やかな配色が、印象的なかぎ針編みのワンピース。こちらは1970年代頃のmade in Japanの製品です。もう アンティークショップでもめったに見る事がなくなった、このような布帛の生地とかぎ針編みで出来たアンティークのワンピースの中でも、本体生地が白というのが非常に珍しい。
白でありながら、汗染みの出来やすい箇所にさえシミ1つなく、破れなど他に目立った痛みもない とても良いコンデションです。ここまで手の凝んだワンピースなので、元々高価な既製品だったはず‥とっておきの[よそゆきのワンピース]として大切にされていたのでしょうね。
かぎ針編みワンピースの丸いモチーフ
端々まで手の凝んだワンピースですが、1番目を惹くのは やはりこの丸いモチーフ。
直径1.5センチの白いお花を中心にした小さなモチーフと、ピンクのお花の刺繍が施された布帛の生地をつないでから、その周りに白い糸で飾り編みをして‥
最終的に、1つのモチーフの大きさは約21センチとなっています。つないだモチーフの隙間を、今度は数種類の編み方のかぎ針編みで埋めつくされ‥スカートが形成されています。
非常に美しい編み目です。どの箇所を見ても、目が均一で糸の引き加減も一定です。糸で創り出した編み地の凹凸感には、芸術性さえ感じます。
かぎ針編みワンピースの仕様
ワンピースの身頃
グリーンの糸で編まれた丸いヨーク丈は、前中心で約6.5センチ。本体身頃との接ぎ目部分から、衿ぐりに近付くにしたがって少しずつ編み目を減らし綺麗なネックラインを作っていて
前後身頃の本体とヨークの接ぎ目部分には、適度なギャザーが入っています。このギャザーが入っていることで、柔らかな表情と身頃に適度な[ゆるみ]がうまれています。
後ろファスナーあき。
着ているうちに、だんだんと衿ぐりが伸びてしまわないように、衿ぐり端1周に 白い伸び止めテープが入っています。
前中心は、約2センチ幅の飾り前立てがステッチで付けられていて、その左右には5ミリ幅のピンタックが3本ずつ。約1.5センチ幅の、テープ状に編んだグリーンの編み地を前立て端とピンタックの中に挟み込んで ステッチで押さえ レース風に見立てています。(どこまでも手が凝んでる‥。)
ワンピースの袖
6分丈のラグランスリーブで、着ると透かし編みの間から肌が見えるデザイン。袖付けラインの下のあたりにも、汗ジミがなく綺麗な状態です。
袖口は、大きめのゴム上がり寸法になっているので、ゴムがキュッと腕を締め付けることはありません。
袖口フリルの幅は、ゴムの位置から測って約6センチ
かぎ針編みワンピースのウエスト・裾
ウエストは、2本のコールゴム入り。(コールゴムというのは、細い幅のゴムのことで、柔らかくて締め付け感が少ないことから、赤ちゃんや幼児用のパンツのウエストなどに使用される優しいゴム。)
ウエストのゴム上がり寸法は、Mサイズにしては大きめの設定になっていますが、全体のシルエットのバランスは綺麗です。このまま着たり、ベルトでウエストをマークしたり、どちらでもお好みで着て頂けるかと思います。スカート部分のみ、裏付き(キュプラ)
裏裾は、1センチ幅の三つ折りステッチ仕様
このかぎ針編みワンピースを、隅々まで見ていると デザインやパターンの素晴らしさはもちろん‥縫製に携わった方・ニッターさんの技術と心使いを感じます。ようやく日本のアパレル業界が発展し始めた1970年代、まだ知識も技術も少なく[服を創ること]自体、毎日が手探り状態だったであろう時代に、このような素晴らしい製品を創っていたのだと思うと嬉しさと誇らしさを感じます。
ワンピース着用写真
このかぎ針編みワンピースが、まだ40年、50年以上先まで‥誰かの人生のいろんなシーンを美しく彩っていくことを願います。
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